推しと宇宙とアンモナイト

好きがあふれて言葉になりました。

ふたつの幻影〜マスカレイドミラージュ考察〜(中編)

前回までのあらすじ
ついに踏み入れた仮面舞踏会の世界。
そこには深く、暗い沼が広がっていて……どうしてこんなにも胸が苦しくなるのか。
浮かび上がるふたつの幻影を目指し、ちはや調査員の魂は神戸へと飛んだ。
ふたつの幻影〜『マスカレイドミラージュ』考察〜(前編) - 推しと宇宙とアンモナイト

 それでは、ここでプリンスならびに『マスカレイドミラージュ』の3人のバックグラウンドについてまとめてみたいと思います。

 那月はゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪Repeat』、嶺二と藍は『うたの☆プリンスさまっ♪All Star』を基準とした記述です。
 ゲーム及びマスカレイドミラージュ全般における多大なネタバレを含みますのでご注意ください。

プリンス

  • 四ノ宮那月
    • 眼鏡を外すと別人格である「砂月」が現れる。
    • 幼少期に師事していたバイオリン教師に曲を盗作され、自分のもとから去られたトラウマから砂月が生まれた。
    • 物腰の柔らかい那月とは正反対に砂月は凶暴な性格だが、これは那月を守るため。
  • 寿嶺二
    • お調子者の三枚目ポジションだが、誰に対しても一定以上は踏み込ませない一面がある。
    • 早乙女学園時代からの親友だったアイドル・如月愛音の苦悩を知りながらも、彼の失踪を止められなかったことを未だに悔いている。
    • そのため、自分が心から楽しむことや、幸せになることは許されないと思っている。
  • 美風藍
    • 如月愛音の外見を模して作られたソング・ロボ。
    • 失踪後、意識不明のまま外界との接触を拒絶している愛音のために作られた。
    • 二人の回線を繋ぐことで藍が学習した感情を愛音に伝え、それによって愛音が目覚めることを期待されている。

マスカレイドミラージュ

  • シーノ
    • 幼少期にレイジーともに誘拐され、誘拐犯に殺されそうになったことをきっかけに「影」であるもう一人の人格が生まれた。
    • シーノを守るために生まれた「影」は、眼鏡を外すことで現れる。
    • 「影」でいる間のことは、シーノの記憶には残らない。
  • レイジー
    • 名門貴族の跡取りとして生まれ育ち、周囲に期待される振る舞いを演じてはいるが、そんな自分を冷めた目で見ている。
    • 自分のせいでシーノを危険に巻き込み、「影」が生まれたことを負い目に感じている。
  • アインザッツ
    • 錬金術師ジェルマンによって作られた機械人形・オートマータ。
    • 自分の頭で考え、行動することができるよう、学習機能を備えている。


 ……いかがでしょうか。
 改めて並べてみるといかに闇が深いかおわかりいただけるかと思います。


 初代であるプリンスの当て書きゆえに重なる設定。
 けれど、核心に迫る部分を演じたのは初代ではなく、2代目。

 そして、嶺二の過去に関わるのは愛音だけれど、レイジーの場合はシーノがそのポジションにいます。
 また、那月は藍との関わりが深いのに対し、シーノはレイジーと幼なじみであり、親友となっています。


 このねじれの構造こそが、『マスカレイドミラージュ』という作品を深みのあるものとしているのではないでしょうか。


 例えば、アインザッツがレイジーに対し、「僕を誰と重ねてるの」と詰るシーン。
 再演だけを見ている場合、レイジーアインザッツに重ねているのはシーノだと思うでしょう。
 けれど、初代であるプリンスを知っている者の脳裏には、もう一人の人間の名前が浮かびます。


 そう、如月愛音です。


 これが、再演脚本及び演出のほさかよう氏の凄いところだと思いました。
 レイジーアインザッツの二者関係に絞らないことで、プリンスたちの背景に想いを馳せる余地を観客自身の中に作りあげているのではないでしょうか。


 そして、この流れは再演を演じるのが2代目だからこそ出来たことなのかもしれないな、とわたしは感じました。
 いくらお芝居の中でも、美風藍に「僕を誰と重ねてるの」と言わせるのは酷だし、演じる方にも、観る方にもダメージが大きすぎたと思うのです。
 けれど、2代目というプリンスから離れた人間に演じさせることで、ギリギリの距離感をもって受け止められるようになったのではないかと。


 次元と、関係と。
 さまざまな要素が複雑に絡み合っていたからこそ、再演『マスカレイドミラージュ』について、たくさんのことを考え、たくさんの想いを抱きました。初演から4年近く経って、こんなにもマスミラのことを考えることになるとは思いませんでした。
 そのくらい、わたしの中で大きな存在になったんです。


 そうして迎えた神戸千秋楽。
 ライブビューイングにて観劇しましたが、東京で観たマスミラとは色々なものが少しずつ違って見えました。


 ここちゃんと円盤に収録されていました。
 カメラワークについては賛否両論あるかと思いますが(全景で観たいところもある)、細かな表情を何度でも見られるのは円盤の強みですね! そして神戸千秋楽では、同じ台詞なのに言い方が変化しているところがいくつか見受けられました。
 それは、公演の最中でそれぞれの解釈が深まり、変わっていったところなのでしょう。

 こちらも繰り返し観ることで、ああ、ここはこういう意味も込められていたんだな、という気づきが生まれましたし(個人的にいちばん印象に残っているシーンについては、後日詳しく触れたいと思います)。





 これはライビュ直後のわたしの感想垂れ流しなんですが、そのまま引用した方が伝わるかな、と思いまして。

 わたしは初代を演じたプリンスと2代目を演じた俳優さんたちをそれぞれまったく別の人間として見ていて、そのスタンスはずっと変わらないんですが、お芝居の中のシーノ・レイジーアインザッツに関しては初演と再演とは地続きのものだと思っています。

 だから、初代たちがTwitter企画であれこれおしゃべりしながら過ごした時間も、再演に繋がっていったのかな、と考えているんです。
 当時、これまであまり接点のなかった四ノ宮那月と寿嶺二が少しずつ距離を縮め、美風藍とともに濃密な4ヶ月を過ごして千秋楽を迎えたことは、きっとどこかに息づいているんじゃないかなって。


 ちなみにツイートの中で触れている「クリスマス」とは、2013年12月24日に行われた初代マスミラ組によるパジャマパーティのことです。


 サンタさんを待ちながら寝てしまう四ノ宮那月のピュアさと、2人のサンタさんによる優しさ、さらに現れた3人目のサンタさんという壮大なハートフルストーリーは、後世に語り継がれるべき出来事だったと思うので、マスミラをお好きな方にはぜひチェックいただきたいと思います。


 先日開店しましたシャイニングストアでも、当時のツイートをまとめた「PRINCE TWEET LogBook」も販売されておりますので。

 わたしも今回改めて読み返しましたが、100公演を超えるロングランだった初演になぜ行けなかったのか、いまでも不思議です。


 さて、話を神戸に戻します。
 神戸千秋楽ではキャスト全員によるカーテンコールが行われました。

 そこで感じたのは、2代目の3人だけではなく、すべてのキャストとスタッフとが、愛とリスペクトとを持って再演『マスカレイドミラージュ』という作品を作り上げてくださった、ということです。
 わたしたち初代のファンが愛して、大切に思ってきた作品だということを十二分に理解していただいた上で、さらに美しく、残酷な世界を広げてくださったんです。


 再演を実現するにあたり、たくさんの批判の声があがったし、再演決定の一報によってうたプリから心が離れてしまった方もいました。
 それを止めることができなかったのは今でも歯がゆく思います。
 けれど、作り手の皆さんたちはそんなわたしたち初代のファンのことも考えながら大千秋楽の日を迎えたのだということが伝わってきたんです。

 だからとても幸せな気持ちで帰路につくことができましたし、3作目となる『JOKER TRAP』再演決定のニュースも嬉しく受け止めることができました。
 マスカレイドミラージュが、劇団シャイニングがさらに好きになれた一日でしたし、円盤の発売が楽しみで仕方なくなりました(既に東京会場で予約済み)。

 
 と、長くなりすぎたので一旦ここで切らせていただきますが、最後にひとつだけ。


 ご存知の方も多いと思いますが、神戸千秋楽カーテンコールでの田川大樹くんのあの振る舞いは衝撃的でした。
 ええ、あれです。

「一石二鳥」「とってもいい匂いするんですよぉ♡」からの「ぎゅーしてもいいですか?」発言。
 なんだこれは……(1週間ぶり2回目)。

 戸惑い、ジャスパーを人身御供にしようとするレイジーアインザッツ2人をまとめてぎゅーするシーノ、って……公式が最大手すぎました。
 田川くんは四ノ宮那月くんとは別人なのに、しかもカーテンコールだから素の人格のはずなのに、意味がわからなすぎて。

 今でも、これはわたしの中で処理しきれなかった大事件として残っております。
 

 もちろん、このカーテンコールも円盤に収録されておりますので、ぜひご覧ください!!(一銭も自分に入らない宣伝)

 では、後編へ。