推しと宇宙とアンモナイト

好きがあふれて言葉になりました。

ふたつの幻影〜『マスカレイドミラージュ』考察〜(前編)

前回までのあらすじ
 劇団シャイニング3作品が2代目俳優により再演決定!
 第1弾忍び道のチケットはご用意されず…
 次は一推しの出演舞台マスミラ!今度こそ、ちはやは舞踏会に行くことができるのか!?
ふたつの幻影〜『マスカレイドミラージュ』考察〜(序章) - 推しと宇宙とアンモナイト

 というわけで2017年8月3日。
 再演『マスカレイドミラージュ』の公式サイトが開設され、2代目キャスト3人が発表、キービジュアルがお披露目されました。

 わたしは初代シーノを演じた四ノ宮那月くんが一推しなので、どんな方が2代目を演じられるのかめちゃくちゃ興味津々でした。
 2代目シーノとなった田川大樹くんについて検索したところ、今年(2017年)ペダステでデビュー後、一般舞台を1件経験され、マスミラが3作目となるフレッシュな役者さんだということがわかりました。

 そして、何よりその身長に注目!四ノ宮那月くんと同じ186cm。しかも血液型も同じAB型。
 どんな方かはまだよくわからないけど、メガネはとてもお似合いになるし、期待して良いのでは…?という結論に至り、うたプリクラスタの友人と協力してチケットを取ることにしました。
 


 なんと、ご用意されました。しかも2公演。


 そしてついに迎えた1公演目終演後。
「最高」「しんどい」「最高」と言いながら原宿へ向かう坂を下る友人とわたし。
 ふわふわとした気分でラストシャニストを楽しみ、友人と別れた後にロフトへ駆け込みました。
 そして、レターセットとペンとを購入し、カフェで2代目シーノに宛てたファンレターを書くことに。


 結論:シーノがいた。


 いや、自分でもまさかこんな一瞬で落ちると思ってなかったんですよ。
 でも、思っていた以上に田川くんの佇まいがシーノとしての説得力を持っていたのです。
 そして、脚本がとんでもなく最高で、とんでもなくしんどくて。
 初演自体がプリンスたちの当て書きとして作られているのは言わずもがなのですが、初演の時系列に続く再演の脚本もまた、初代を演じたプリンスたちの生に肉薄したものとなっていて。演じているのは2代目なのだけれど、そこにプリンスの幻影がちらつくだけにいたたまれない気持ちになってしまったのです。


 いったい、わたしたちはどこの世界線にいるのか?

 それもまた不思議な感覚でした。
 なぜなら、「アイドルとして実在するプリンス」たちが抱えている闇は本来、ファンからは窺い知ることができないものなんです。だから、初代の公演を劇場で観た人はどこまでが当て書きなのか知らないはずなんです。

 けれど、何故かわたしたちは知っている。四ノ宮那月が、寿嶺二が、美風藍が、どんな過去を持ってステージに立っていたのかを。それは、ゲームをプレイして、彼らの心のうちに触れたものしか知ることのできない真実で。
 次元が捻れ、重なり、そして離れていく感覚に、くらくらしました。

 再演で詳らかになったシーノ、レイジーアインザッツそれぞれが持つ背景を思うと、初代のプリンスたちがどんな思いで演じていたのかに思いを巡らせずにいられません。初演が公開された当時ですら、シーノの影の存在に戸惑いを覚えたというのに…。


 そして2公演目の東京千秋楽を迎え。
 カーテンコールで素の田川大樹くんという存在に初めて生で触れ、「なんだこれは……」という思いがさらに広がりました。
 四ノ宮那月くんとはまったくの別人なのに。なのに、なんでこんなに重なるの?と。

 だっておかしくないですか?
 身長186cmであんなにかわいくて、あんなに天然で、あんなにふわふわしている男の子が四ノ宮那月くん以外にもう一人存在するんですよ?
 意味がわからないですね???


 友人も「よくあんな子見つけて来たね…」と言っていましたけど、本当ですよ。よくぞこの子を選んでくださいましたって思いました。むしろここまで彼に関わってこられたすべての方に感謝するレベルでした。
 生で観るからってスルーしようとしていた神戸千秋楽のライビュのチケットを取ってしまったくらいに、ものすごいスピードで田川くんという沼(今となっては宇宙)に飲み込まれていくわたし。

 他の方の感想や考察を見たくて、Twitterであれこれ検索する日々。

 そんな中で、思ったことがありました。


 これです。マスミラ再演のパンフレットで、田川くんは初演のCDを暗記するまで聞き込んだという話をされていました。そして、そこまで取り込んでおいて、一旦全てを壊して、自分なりのシーノを作り上げたと。
 二人のシーノを一から作り直すのは、さぞ大変なことだったろうと思います。
 そして、那月に対する砂月という表現は、初代の四ノ宮那月をも見くびった表現だな、という風にも思いました。



 これが、東京千秋楽を迎えた時点のわたしの考えでもありました。
 初演と再演はまったく別のものではなく、それぞれが補い合い、絡み合うことでさらなる幻影を作り上げ、わたしたち観客の中で完成に近づいていくのではないかと。そう思ったのです。
 そして、それこそが初代と2代目という立場の違う二人の人間を起用した意味にも関わってくるのではないかな、と思いました。

 この思いは、大楽や円盤、ビジュアルブックとどんどん情報を重ねるうちにさらに広がっていきます。
 というわけで続きます。